きれいなものを、みつけに ー小豆島ガールー

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島仕事

化学的な農薬を使わない栽培への試み

ヤマサン醤油さんの農園では『野うさぎが駆け回って、草を食って』います。
初めはこの言葉のすごさがわからなかったのですが、話を伺うと、この言葉の裏には想像を絶する決意の元、常識を覆すチャレンジが繰り広げられていることがわかりました。
「大昔の人は、化学的な農薬がなくても、そしてちゃんと生き抜けるだけの食料を育てることができていたんですよ。」と、ヤマサン醤油さんの佐藤さんは今や当たり前となっている栽培方法に対する疑問を話してくださいました。
オリーブゾウムシにやられた幹
「今やみんなオリーブを過保護にしすぎていると思うんです。とことん草を抜くのはまだしも、除草剤や防虫剤を撒くのを『良し』としています。でもね、オリーブは化学的な農薬が存在しない紀元前から育ち続けているんですよ。だったら、除草剤や防虫剤なんて使わなくても育つ方法はあるはずなんですよ。」
その目線の先には害虫にやられ、弱り切ったオリーブの姿がありました。
実は、ヤマサン醤油さんの農園では化学的な農薬を使っていません。
現在、オリーブの強敵“オリーブゾウムシ”から守る方法は高濃度の“スミチオン”を配布するしかないと言われています。
また、その“オリーブゾウムシ”を見つけやすくするためには、根本の草を除く必要があり、防草の効率を上げる為に通常は除草剤を撒いて防ぎます。
見渡す限りのオリーブが弱っているのは“スミチオン”も“除草剤”も使わないために“オリーブゾウムシ”にやられていたことが原因でした。
オリーブゾウムシにやられたオリーブ農園
「『農薬使わないなんて無理だ』ってみんな言います。ご覧の通り、実際にうちはかなりやられていますからリスクがあるのは充分わかっています。大切なオリーブがやられるのはすごく辛いのですが、僕は『無理』という言い分に納得していません。『無理』とわかったらすぐに諦めていたから『無理』になっていただけなんじゃないんでしょうか。少なくとも、僕自身がとことん『無理』にチャレンジしていないのに、『無理』と決めつけるのは嫌なんです。」
そう、『野うさぎが駆け回って、草を食っている』農園とは、『無理』を『可能』にする農園なのです。
オリーブゾウムシにやられたオリーブ農園
“除草剤”を使わない農園
“除草剤”を使わないだけで野うさぎは安全と判断し、草を食べる為にやってきます。
しかし、“除草剤”を使わないと当然草がどんどん生えてきて、春から夏にかけて毎日地獄の草抜きをやり続けなければならなくなります。意地で草抜きをやり続ける方法もありますがそこに『人件費』がかかってきて、他のことに力を入れることができなくなったり、会社を継続する為の利益が少なくなります。
その対策が『草生栽培』なのです。※前回の記事参照
草生栽培』によって“除草剤”を使わなくてもいい農園にすることができます。
しかし、『草生栽培』だけではオリーブゾウムシを防ぐことができません。
むしろ、草が生えて“オリーブゾウムシ”を見つけにくくなります。
オリーブゾウムシにやられたオリーブ農園
オリーブゾウムシが生まれない農園
オリーブゾウムシを防ぐ為に行われているのが“バイオセーフ”。有機として認証を受けている微生物の力を借りて、“オリーブゾウムシ”が発生しにくい土壌にしているのです。
どういうことか。
実は、今力を借りている微生物は“オリーブゾウムシ”の幼虫を食べてくれます。
先ほど『オリーブの強敵“オリーブゾウムシ”から守る方法は高濃度の“スミチオン”を配布するしかない』と書きました。ここで言う“オリーブゾウムシ”は成虫のことです。
“オリーブゾウムシ”の成虫は化学的な農薬“スミチオン”でしか対応できません。
しかし“オリーブゾウムシ”の幼虫ならば有機認証の微生物で防ぐことができます。
“成虫”になる前の“幼虫”がいなくなれば“成虫”の発生を防ぐことができます。
なるほど!そして結果は?
「2年前から“バイオセーフ”を試み、年々成虫の数は減っていますよ。でもまだ2年しかやっていないですし、他の農園から飛んできたりするので成虫は未だにいます。しかしまだ諦めません。今は日々見回りをしては捕獲をしていますよ。」
オリーブゾウムシにやられたオリーブ農園
“除草剤”ではなく“草生栽培”を。
“防虫剤”ではなく“バイオセーフ”を。
“化学的に防ぐ”のではなく“自然の仕組みがうまくまわるように人間が手助けをする”。
これが佐藤さんの考えです。
実はこれ、小豆島のお醤油屋さんがよく口にする
「醤油は人が造るんじゃない、菌が造る。人は菌の働きを手助けするだけだ」という考えに通じているのです。
「醤油屋らしい考えでしょ」と佐藤さんは笑います。なんて島らしい農園。
そんなヤマサン醤油さんの試みはまだまだ続きます。
次回は、『オリーブの樹による循環型農法』についてお伝えします。

kelly