きれいなものを、みつけに ー小豆島ガールー

小豆島で輝く女性の「きれいなもの」がいっぱい!

島仕事

想いを託された桶

根本醤油の醤油桶

「千葉から10本の大桶が来たよ」
aiaiからのなかなか耳にしない知らせを聞いてすぐにヤマヒサさんを尋ねました。
桶の木は分厚く、ステンレス等で締め直しもしていなく、木の表面も桶の形も整った非常にいい状態の桶が並んでいました。

これはすごい!「この桶、どうしたんですか!?」と、笑顔でヤマヒサさんに尋ねると、桶の背景には表情も硬くなる事実がありました。

桶がどこからやってきたかと言うと千葉県の『根本醤油』。
江戸時代から続く古い醤油屋さんです。
ところが東日本大震災の影響で土地が液状化し、コンクリートの下は柔くなり、屋根も落ちてきて蔵が崩れてきました。直すにしても、他の方が土地を所有しているため修復することができません。出した決断は『廃業』。

「蔵が使えなくなっても桶はまだ使える。桶だけは…!」と根本醤油さんは願い、和風総本家で醤油の大桶が造れる“上芝さん”がいたことを思い出し、上芝さんに連絡をとったそうです。

連絡を受けた上芝さんは千葉に修復の為に行く用事もあった為、根本醤油さんにも立寄り、桶を確認しました。
「これはいい状態だ」
そして、数社の醤油蔵に声をかけました。そのうちの1社がヤマヒサさんです。

「他にも欲しいと言った蔵はあるでしょう」と私が尋ねると、
「根本醤油さんから聞いた話では、うちの他には震災で蔵が潰れて復活しようとしている越前高田市の八木澤商店さんも欲しいと言ったそうです。ただ、受け入れる体制を整える必要もあるので2年待って欲しいとおっしゃったそうです。根本醤油さんは2年待つのは非常に難しいため、うちが受け取ることになりました。」

八木澤商店さんがどれだけの想いで欲しいと言ったか…想像するだけで心が苦しくなります。
また、同じ震災の被害を受けている根本醤油さんも痛みを重ねて感じ、力になりたかったことでしょう。

ここにあるのは端から見ればただの大きな桶。
しかし、この桶の背景には胸を締め付けられるような現実がありました。
もちろん、醤油の桶は受継がれることが多いのですが、わずかにでも受継がれる現場に触れることができたのは初めてで、『桶を受継ぐ』という重みをやっと感じられたように思います。

“これから”に、強く願いをかけます。

kelly